上へもどる

社会保険労務士飯田事務所ロゴ

ハマキョウレックス社を考える ‐労働判例だけでなく‐

2019/08/01

ハマキョウレック社を考える画像

皆さんこんにちは。
ブログ更新が復調しつつある所長の飯田保夫です。

長かった梅雨が明け一気に暑くなりましたね。
プラム農家にお話を伺ったのですが、「初夏まで寒い時期が続き今年は不作」とのことでした。果物は、一気に暑くなったからといってもダメなのですね。 実がなるには時間をかけた環境条件が必要なのですね。

さて、同一労働同一賃金(均等均衡待遇)を語る上で、もはやその社名を聞くと、労働系専門家間では「~事件」として認識されてしまうようになってしまったと言えるハマキョウレックス社。
ご存じではないという方々もいらっしゃるかもしれませんので、どういった事件だったかを少しおさらいしますと、正社員と契約社員の間における不合理な待遇格差解消を求めた訴えにより、皆勤手当などが契約社員に支払われていないというのは不合理であるとして(労契法20条)、最高裁によりその支払いが命じられた、というものでした。つまり、正社員だけに「○○手当」がありますよ、という“正社員だから”という理由のみでは、それは不合理となってしまうという判例が生まれたというのがポイントでした。

ハマキョウレックス社は物流大手の会社なのですが、この事件から知ったという方(専門家も含めまして)は、どうしてもこの事件のイメージが先行して定着してしまっているかもしれません。

それだけでは何とも残念です。

つい先日、会計関係の書籍を読んでおりましたら、そこにハマキョウレックス社の大須賀会長のインタビュー記事がありました。(最高裁判決が下る前に出版されたものです)

「収支日計表」なるツールを生み出し、日々の収支を経営層や役職者のみならず全員に意識づけるように啓発されているそうです。このツールは大須賀会長が考案されたとありました。こうした取組の根底に、各従業員の“自発性”についての言及があるのですが、自発性の誘引(事前)とその報酬(事後)として、各種手当が設けられてきたのではないかと思えたのです。

構造はこうなのではないかと思うのが、
時間をかけつつ醸成された会社文化(各種手当)に対し、事後のある一定点にできあがった法(労働契約法)は、そうした個々の会社における醸成の過程を気に留めていられません。法はドライに適用されます。冒頭のプラム農家とは反対に、時間の経緯やそれを遡るということはなく、成立以降の状況が法に適しているかどうかをジャッジするのです。

当然、醸成される会社文化は醸成を試みているその時点では、それより先々の将来について、ましてや将来の法の定めを予測することなどできないのです。

ハマキョウレックス社の場合、ジャッジされた結果が不合理となってしまいましたが、もとは皆の自発性を生み出そうとしていた試みだったと思うのです。

労働法だけが事業の運命を制約するものではありませんが、労働法により経済合理性の追求とのバランスを考えなくてはならない事案が生じるという教えがハマキョウレックス社の事案から考察できるのです。そして、ハマキョウレックス社でいえば、自発性の誘引もしくは労いに対し、手当を設けたという合理的な行いに対して、時間が経過した後に、それが均等均衡の考えから見れば対象者不合理だとされてしまった。社内においては合理性をもって進めた結果、事後成立した法がそれを不合理とした、このような構図が事実に近いのかもしれません。

こうした教訓からは、多くの会社が、正規と非正規の間においての賃金体系の見直しを迫られるでしょうし、その支出額予算の再計算が必要と感じるでしょう。

労働法規・会計法規・税務法規、それぞれのバランスを見ながらの経営、これがハマキョウレックス社からの教えなのだと思います。
そして合理性や生産性向上は、数値結果のみを追いかけてしまうと、将来、数値至上ではない制約が生じ、結果、求めていた数値は理想的結果にはならない可能性があることも念頭に入れておかねばなりません。

数値のみに捉われずに合理性や生産性を考えるべし。

何とも難しい課題ですが、向き合っていくしかないですね。




書いた人
飯田 保夫

社会保険労務士飯田事務所 所長。1981 年埼玉県生まれ。信州大学経済学部卒業、埼玉大学大学院経営管理者養成コース修了。法人の社会保険・ 労務管理支援のほかに、補助金や助成金を活用した経営改善の専門家として、首都圏を範囲に活動。役職:一般社団法人 日本介護福祉支援機構 監事など