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自然災害により出勤できない場合の休業手当取扱い    〈給与計算実務〉

スタッフブログ

2025.09.25

休業手当

皆さんこんにちは。

太陽フレアにより例年以上に暑い夏の間、冬生まれの私は溶けて蒸発。
ここ最近、やっと涼しくなり固体に戻れてきた感があります。
そんな寒冷地仕様の私ですが、
肌はスポーツマン並みにこんがり黒みがかっている所長の飯田です。

月1ブログの更新を止めてしまい
「どうしたんだ」「何か発信してくれ」「何か言ってくれ」
ということで
『Say Anything』 X JAPAN

その昔、内閣総理大臣の小泉さんが同バンドの他曲を推しておりましたが
どちらかというと、僕はバラードではこちらの曲の方が好きです。
Wikipediaによりますと、この曲はキーが高すぎてボーカルのToshiが吐血したとか。

おやおや、体調がすぐれない時は無理せずに休むようにしましょうね。

このように
体調がすぐれない時のみならず、
自然の猛威により会社に出勤できないなんてこともありますよね。
9月10月は台風のシーズンですし。

今回はそのような
“自らの責めに拠らない勤務不能の場合における休業手当の扱い”
について記したいと思います。

休業手当の定め

結論



いきなり結論(今回の“答え”)から記しました。
なんとも分かりやすい。

が、「いきなり結論を示されても何のことか分からん」という読者もいらっしゃるかもしれません。

このブログを読み進めてみて、最後に上記【結論】に戻ってきてください。
話の方向性が上手く着地するはずです。


休業手当支払の有無を労基法と厚労省通達を参照してみます

台風発生


人事事案が発生!

“公共交通網が止まってしまい会社に出社できない”
さてこのような場合に
雇い主側では
「労働力の提供がなされないのだから届出欠勤!賃金は不支給!以上!」
果たしてこれで良いのでしょうか。

“休みたくて休んでいるのではない”という事情を汲みすと、
従業員側としてはやりきれない心証が残ります。


小さな感情のヒビが、ゆくゆく大きくなり労使関係に亀裂を来すことがあります。
そうした感情的な遺恨を残さぬためにも、法の扱いをひも解いてみましょうか。


労働基準法と厚生労働省通達



1. 労働基準法第26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、
 使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わ
 なければならない

2.厚生労働省通達
不可抗力の要件
 不可抗力と認められるためには以下の2つの要件を満たす必要があります:
 (1) その原因が事業の外部より発生した事故であること
 (2) 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない
  事故であること

自然災害時の取り扱い
 天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に
 休業手当の支払義務はありません。


 東日本大震災時の計画停電に関しても、使用者の責に帰すべき事由にあたらないと
 され、休業手当は支払い不要となりました。


 地震に伴う休業に関する取扱いについて(厚生労働省HP)
 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017f9e.html#1-1 

使用者の責めに帰すかどうかがポイント



ここで重要な論点です。

“公共交通網が止まってしまい会社に出社できない”
このような状況下において
出社できない原因が“公共交通網が止まっていること”
これが「使用者の責め」に「帰す」かどうかが大事な論点となります。


そう。
会社事情により公共交通網を止めている訳ではありませんよね。
従って、自然災害の影響により公共交通機関が稼働停止となり出社できないことにつき、会社側における責任は無く、会社側の責めに帰すとは言えませんから、休業手当の支払いは不要ということになるのです。


従って
自然災害による公共交通機関の運休で出勤できない場合
(原則として)休業手当の支払い対象外となります。 



ということで当初の回答に戻って参りました。が、
「原則として」、このフレーズにお気づきの読者の皆様方、なかなか良い勘所を持ち得ておりますよ。

状況に拠り柔軟な対応を検討することが推奨されている


自然災害による公共交通機関の運休(第三者の影響・事業主側で回避できない事情)
で労働者が出勤できない場合は:
 ・会社から休業を命じているわけではない
 ・不可抗力による事由に該当する
 ・原則として休業手当の支払い義務はない

ただし、企業には労働者の生活保障への配慮が求められており、可能な範囲で年次有給休暇の取得奨励や在宅勤務への切り替えなど、柔軟な対応を検討することが推奨されています。


同じ自然災害発生の影響による出社不可の事案でも、
例えば、交通網が完全にストップしているということではない事例や、午前中は出社して勤務していたが、午後から天候が急変して会社側の安全判断により全員を帰宅させる指示命令を出した、これらのようなケースでは休業手当の支払扱い事例が変わってきます。



急な天候状況、予期される交通網への影響。
これらを総合的に判断し、適宜な従業員管理する、人事部、ひいては経営者に求められるものの一つでありますね。


「何か言ってくれ(Say anything)」と言われるその前に、我々は適宜判断し発信しなければなりません。