メンタル不調の社員とどう向き合うか~法的な観点×実務的な配慮~
「うちの社員がメンタルで休職に入ってしまって」
「職場内の人間関係が原因だと言っている」
「休職者本人にも、職場の環境問題に対しても、どう対処すれば良いものやら」
「主治医から復職の診断書が提示されましたが、本当に復職させて良いのか…」
これらのような切実な相談が日々増えております。

厚労省の調査では、メンタルヘルス不調による休職者がいた事業所は10.2%※とのこと。
しかしながら、私個人の体感としては約60%に近いのではないかと思うくらいメンタルの相談は増えてきています。規模がある程度大きい事業所であれば手厚く制度化された休職を選びやすいのかもしれません。小規模の事業所では、休職せずに退職を選択してしまうケースも多々あり、実際のところ休職としてカウントされていないものも結構あるのです。
※厚生労働省の「労働安全衛生調査」(2024年調査)
メンタル疾患を抱える社員への対応について
「法的な観点×実務的な配慮」
さて
今回は、メンタル疾患を抱える社員への対応について「法的な観点×実務的な配慮」という両面から整理してブログ執筆を進めていきます。
飯田事務所のブログを参考とされている会社様、人事部様からの応援メッセージもいただくこともありまして、視覚的・体系的にまとめ皆様のいざという時に見返していただければと思い執筆致します。
1_法的な観点
「職場環境配慮義務」 (労働契約法第5条)
・会社には安全配慮義務の一環として職場環境配慮義務に基づく法的対応義務があること
・これは単に「気をつけましょうね」という精神論や優しい注意喚起ではないこと
・違反すれば債務不履行や不法行為により、損害賠償請求の対象にもなる重要な責任
人事担当の方からご質問をいただきますのが
「会社としてどこまで配慮すればいいの?」
この点、法では具体的な配慮水準は定められていないのです。
そこで人事部に求められる対応が次に記す“実務的な配慮”です。
2_実務的な配慮
完璧を求めるのではなく、個々の事案ごとに、できる範囲で誠実に対応すること
・メンタル疾患の気配が見える従業員への適切な気遣い
・メンタル疾患の原因追及
(業務量の多少・職場内人間関係・従業員同士のトラブル・ハラスメントの存否確認)
・トラブルを察知した場合に速やかに関係当事者へのヒアリング実施
・職場環境の保全を推進する
昨今、職場環境だけでなく物価高による家計への圧迫から来る経済的ストレスも実態悪化を助長する一つの誘因となり、結果として、会社でのストレスが最終的なトリガー(引き金)になってしまうというように、ストレス因子が多数絡み合い、職場だけが唯一の原因ではないものの、症状を発動させてしまう大きな一手になってしまうことがあるのです。
このような遍在するストレス原因を抱えた従業員を、職場内のみの問題として切り取って解決を試みようとすれば困難を極めることになるでしょう。
解決の糸口は職場からだけでは見つからないかもしれません。
産業医への相談を促している方策やマニュアルも数多く見受けられるところですが、必ずしもその相談行為が功を奏しているとは言い難いケースもあるのも実情です。
メンタル不調者に早期に歩み寄るには
企業人としては原因を特定し完全ある快復に向けて指導をしていきたいと思うところではありますが、発症してしまうその前に、そう、メンタル不調を抱える社員を抱える企業側としての最重要課題は「いかに早期にメンタル疾患の気配を拾えるか」にあります。
“不調が固定化するその前に”の一言に尽きると思うのです。
休職や退職などの相談として形になって届いてしまう前に、どうしたら予兆を見抜き救済の手を差し伸べることができるのでしょうか。
定期的なone on one 面談がかなり有効です
私の長年の人事経験上、これが最も有効であると考えております。
勤務時間のうち数分でも良いので、従業員との面談時間に振り向けていただき対面で話を聞くのです。
・心情の変化
・声色
・シンパシーの動き など
対面の場面ならではの受け取れる情報も含めて目の前の相手に対峙していただくのが良いのです。
その点、可能な限りon-line上ではなく、面と向かっていただくのが良いと考えますが、既に不安や気分障害のように症状が出始めているような場合は、on-lineを第一歩としても良いでしょう。
“話を聞いてくれる相手”という印象や信頼関係の構築が最初の重要な目標です。
「どうしても上司には相談しづらい」
「社内に相談を申し出たことが知られてしまうのではないか」
周りの目が気になる方もいらっしゃるかもしれません。
そうした場合には、外部カウンセラーなどの外部人材の積極的活用をお勧めします。
社内人間関係下では打ち明けられない内心や心情を、何のしがらみも相手を前に吐き出してもらうのです。
メンタル不調者が懲戒処分の対象になることも?
少数事例ではありますが、メンタル不調の社員が問題行動を起こし、職場環境を更に不調にさせる原因となってしまうという二重構造の悩ましい事案も目にしてきたところではあります。
周りの同僚は、その虚言や暴言が精神疾患に起因するものであり「仕方ないものだ」と頭では分かっていても、常に不快な発言が職場内を飛び交い続けていると、周りの他の社員も次第に耐えきれなくなってしまいます。
労働契約法第15条における懲戒処分の要件として
1. 懲戒事由に該当すること〈社内規程との照らし合わせ〉
2. 客観的に合理的な理由があること
あまりに虚言や暴言の度が過ぎる場合には、このように法規定を当てはめて懲戒に処することも考えられますが、 その背景にメンタル疾患がある場合、社会的相当性がより慎重に問われます。
飯田事務所のベストプラクティス
貴社の対応状況を診断します。
メンタル疾患への対応の必要性を感じながらも、「具体的にどうすればいいのか分からない」という企業様は非常に多くいらっしゃいます。
以下のチェックリストは、皆様の企業における対応体制がどの段階にあるのかを診断するためのものです。
それぞれの項目に3つ以上当てはまる場合、メンタルヘルス対応の専門的サポートをお勧めします。
✔ メンタル不調者が発生した際の対応フロー(マニュアル)が定められていない
✔ 管理職や人事担当者向けのメンタルヘルス研修を実施したことがない
✔ 産業医がいるものの、連携体制が明確に構築されていない
✔ 一度休職者が出たときに、復職判定や職場復帰の基準が曖昧だった
✔ 職場環境配慮義務について、法的な側面から検討したことがない
✔ 懲戒処分が必要な場合の判断基準(メンタル疾患との関係性考慮を含む)が整理されていない
✔ 定期的なone on one面談が制度化されていない
✔ 労働契約法第5条の「職場環境配慮義務」について、詳しく把握していない
いかがでしょうか。
3つ以上の項目に該当する企業様は、メンタルヘルス対応を「いつか対応しよう」ではなく、今この瞬間から整備すべき重要課題として認識されてみてはいかがでしょうか。
飯田事務所では貴社の職場環境と法的リスクの両面からサポートします
メンタル疾患への対応は確かに難しい課題です。
しかし、「法的な観点×実務的な配慮」 を理解し、体系的に進めていけば必ず道は開けます。
飯田事務所では以下のようなご支援を行っております。
・メンタルヘルス対応マニュアルの策定・改善
・管理職向けメンタルヘルス研修の実施
・復職判定時の法的リスク評価
・産業医との連携体制の構築
・懲戒処分の妥当性判断(メンタル疾患との関連性を含む)
・個別ケースの相談・対応指導
一人ひとりの社員を大切にし同時に適正な職場環境づくりや休職管理の視点も忘れない。
温かく健全な職場環境づくりのお手伝いができれば幸いです。
メンタルヘルス対応についてのご相談やご質問は、いつでもお気軽にお問い合わせください。
嬉しい言葉がけがメンタルを健全にする!
最後に。
先週、あるクライアントから嬉しい報告をいただきました。
「飯田事務所さんのアドバイス通り、産業医や外部カウセンラーと連携して対応したら、 休職していた社員が無事復職できました」
日々日々の成果を実感できる反響をいただき、私達も励みになっております